編集グループ〈SURE〉

シオドーラ・クローバー(中尾ハジメ訳)
『内陸のくじら 
 〜カリフォルニア・インディアンの伝説からの9つの再話〜』

商品写真
多様で幅広いインディアンの伝承のなかから、選び出された9つの物語──。
それは、仲間の女たちの目にうつっていたであろう、
若く美しい、あるいは年老いた、
また、邪悪なヒロインたちのポートレイトだった。

2017年6月上旬刊行

定価2,970円(本体2,700円+税)

四六判・並製、256ページ
発行・発売 編集グループSURE
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本書について

本書シオドーラ・クローバー『内陸のくじら』は、米国カリフォルニア地域の先住諸民族に伝わる口承説話から選ばれた、9つの再話による物語集です。

著者、シオドーラ・クローバー(1897-1979)は、米国の作家、人類学者。『ゲド戦記』で知られる作家、アーシュラ・K・ル=グウィンの母親です。

1920年、シオドーラは、カリフォルニア大学バークレー校の大学院生として人類学を学んでいるとき、教授をつとめる著名な人類学者アルフレッド・クローバーと出会い、のち結婚しました。主な著作に『イシ』(岩波書店)などがあります。

本書『内陸のくじら』の大きな特徴は、女性の視点から物語を編み直している点です。物語によっては、男性の英雄伝を、女性の視点から見つめ返しています。

彼女がなぜ女性を主人公にして再話したのか。それは、多くの資料にあたり、物語が伝わる土地を訪れるなかで、インディアンの女性たちと出会いを重ねたことが下地をなしています。シオドーラは、「インディアンでもイギリス人でも、ヒロインであることに変わりはない」と述べ、物語に息づく彼女たちのふるまいや情感との共振を通して、現代人も、そこにある世界像のなかを生きることができるという確信をもっていました。

西日本新聞 書評


レビュー/コメント/推薦文

自然と人間が共に生きた時代、カリフォルニア・インディアンの口承物語は、人間の根源的な在り方を現在の私達に伝える。女と男、親と子、家族とは、深く清い愛情によって培う人間関係そのものであることを。そして尊厳と知性が失われた時、邪悪な心と果てしない欲望に囚われるのも、又人間であるのだと。

ここに書きとめられた女達のさまざまな生き方を、私はとても羨ましいと思う。

──石内都(写真家)


読書にも「断食」というものがあるようだ。この本の九つのアメリカ・インディアンの女たちをめぐる物語を読んでいると、日頃の読書が細心に調理された贅沢な食事と感じられる。そしてやがて断食期間をへたあとのように別の想像力のうごきが私の内奥にめざめてくる。

天変地異の後、山の奥の小さな湖にとり残された鯨の話(「内陸のくじら」)が、いま、私のなかで洞窟の奥で成長し、そこから出られなくなった井伏鱒二の山椒魚(「山椒魚」)につながっている。

──加藤典洋(文芸評論家)


本書の目次

序文

第一部

内陸のくじら/アビ女/蝶男/踊り狂い/恋の呪文/ウマイ/家っ娘/サンの娘テシィリャ/男の妻
第二部
インディアンの物語のいくつかの特徴

この本の物語について

出典一覧

シオドーラ・クローバー著作リスト

訳者あとがき 中尾ハジメ


「内陸のくじら」(あらすじ)

「内陸のくじら」冒頭部分を読む


訳者略歴 中尾ハジメ

1945年、東京生まれ。環境社会評論家。著書に『スリーマイル島』(野草社)、『原子力の腹の中で』、『電気じかけの俺たち──原子力の腹の中で2』(ともに編集グループSURE)。訳書にL・オルソン『アンビヴァレント・モダーンズ』(共訳、新宿書房)、W・ライヒ『性と文化の革命』(勁草書房)ほか。

本書の訳者、中尾ハジメさんに、『内陸のくじら』の魅力についてうかがいました。

中尾ハジメ▶️ シオドーラは、カリフォルニアの先住諸民族に伝承されたたくさんの物語のなかから、9つの話を選んでいる。選んだ上で、女の視点から構成しなおしたんだね。

たとえば、「サンの娘テシィリャ」という物語の元になっている説話には、女は、ヒロインとしては登場しない。もともとは、英雄伝説、男の世界なんですよ。だけど、シオドーラ自身が女だということもあるから、この話の中心は、絶対にこの女だ、と感じる。つまり、女のことを女が語ったらどうなるか。普通、伝承とか口承文芸というのは、紋切り型のところをくり返したりして、冗長だったりする。けれども、シオドーラはそれをばさっと削って、こういう形にした。娘の作家アーシュラ・K・ル=グウィンは、『内陸のくじら』について、「この本には1960年以前の白人文学に描かれた無個性の『インディアン女』は登場しない、人間が登場するだけだ」、「たぶん母は気に入っていたいくつかのインディアンの伝承物語を、ひとつひとつ自分流の物語に書きなおそうと習作を繰りかえすうちに、それらの物語をひとつにまとめるパターンが見えてきたのだろう」と書いている。

素材としての伝承物語を細部まで読みとり、その読みを確かめながら、自分自身の主題をはっきりと意識していくことになったのでしょう。


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