編集グループ〈SURE〉

ヤドランカ ソロ・コンサート
”アドリア海 バルカン・クルーズ” 於・石峰寺本堂

2007年11月01日 更新

ヤドランカ写真 2006年10月8日・9日に行われた第1回SUREイベント、ヤドランカ ソロ・コンサート “アドリア海 バルカン・クルーズ” 於・石峰寺本堂は、無事に終了いたしました。そのもようを、ちょっとピンぼけの写真をまじえつつ、お伝えします。

ヤドランカ ソロ・コンサート ”アドリア海 バルカン・クルーズ” 於・石峰寺本堂

ヤドランカ(ボーカル、ギター、サズ)

(ゲスト・ちんどん通信社)

10月8日(日) 午後4時30分開場・5時開演

ふだんの石峰寺の本堂。今回はだいたんにもこのなかでライブを行いました。

8日、お昼過ぎから、4時半の開場に間に合うように、ご本堂内で準備を開始。
──この日のために、SURE工房のご近所に住む中谷豊美さんが、お花を生けてくださいました。

14時すぎ、ゲストの「ちんどん通信社」のみなさんが、石峰寺に到着。住宅地の小路をぬけて、石峰寺まで、道に迷うことなく現れたみなさん。さすがちんどん屋歴20年以上の、路上のパフォーマンス集団。ちんどん通信社代表の林幸治郎さんは、ちんどん太鼓を提げて登場。

14:20 ヤドランカさんも到着。イベントの両日は、ともによく晴れていて、小高い山の中腹にある石峰寺の本堂前には、きもちのいい風がふいていました。

さっそく打ち合わせを開始。全員そろって会うのは、今日が初めてでした。ヤドランカさんのレパートリー、Moon will guide youとStanding on a cloudの2曲を全員で演奏することに。

ヤドランカとちんどん通信社の新ユニット「やどちん」(勝手に命名)のリハーサル風景。手前はバンジョーのジャージ川口さん。とても真剣な表情。

ヤドランカさんがもっている楽器が「サズ」。ペルシャあたりにそのルーツをもつと言われる楽器で、同じくシルクロードに沿って日本伝わった琵琶とは、兄弟のようなものです。サズは、つくる人によってその形が少しずつ違うそうです。ジャージ川口さんによれば、ヤドランカさんのチューニングは、三味線の「二あがり」と同じ。三味線もすぐひけちゃえそう、とのこと。仏像の前にサズをもって座るヤドランカさんをみて、シルクロードってすごいな、と、漠然と感動しました。

16:30 いよいよ開場。ご本堂前で待ってくださっているお客さまにむけて、まず、ちんどん通信社がご挨拶。「蘇州夜曲」など数曲を演奏。

クラリネットの小林信之介さんと、アコーディオンのピンキーこと仮屋崎郁子さん。

お待たせいたしました。本堂内へどうぞ!

17:00 本堂へ夕日が差しこむころ、ヤドランカ「アドリア海バルカン・クルーズ」がスタート。

歌の合間にヤドランカさんは「私はきれいな夕日が沈むのをみながら演奏しているのに、みんなは背をむけていて残念ね」と言った。

コンサートを終え、本堂を出るヤドランカさん

一日目の演奏曲目

  • Andjo(アンジョ)
  • Sto te nema(あなたはどこに)
  • Bentbasa(ベンドバシャ)
  • HAIKU(俳句)
  • Sve smo mogli mi(一日がもっと長ければ)
  • Dream on canvas(キャンバスの中の夢)
  • Zuta Dunja(ズタドゥニャ)
  • Eyes of water(アイズ・オブ・ウォーター)
  • Ko zna reci(コズナレチ)
  • Moon will guide you(ムーン・ウィル・ガイド・ユー)
  • Standing on a cloud(スタンディング・オン・ア・クラウド)

Sto te nemaは、1984年のサラエボ冬季オリンピックのテーマ曲として作られた曲で、セルビア-クロアチア語で「あなたはどこに」という意味。

ヤドランカさんの故郷、旧ユーゴスラビア(現在のボスニア・ヘルツェゴビナ)のサラエボは、さまざまな民族が、古くからまざりあいながら暮らしてきた街。ヤドランカさんの親族、出自や背景はもいろいろ。自称「めちゃくちゃ人」、コスモポリタンのヤドランカさんは、その地では、ひとつの詩が民族によってさまざまなメロディーで歌いつがれてきた例を、実際に三つ、歌い分けて聞かせてくれました。Eyes of water は、ヤドランカさんの最近作で、画家でもある彼女は同タイトルの連作絵画も制作しています。──故郷の小川の流れは、いまもわたしの顔を覚えているに違いない──、そんな思いを込め、ヤドランカさんは、デリケートなサズをかきならすようにして、すごくかっこよく演奏していました。

「ちんどん通信社」のクラリネットの小林信之介さんは、ヤドランカとのデュオで両日とも大活躍。10代のころ、ジャズ・ベーシストとしてキャリアをはじめたというヤドランカさんは、着流し姿の小林さんとともに、ジャズ風のアレンジで「Ko zna reci」を熱演。「ちんどん」のみなさんによれば、こんなにジャジーな小林さんの姿を見るのは、かつてなかったことだとか。「ちんどん屋」というお仕事柄、お笑い系トークが中心と見られがちなちんどん通信社の面々ですが、この日は、みなさんのミュージシャンとしてのスピリットが、大きく大きく現れ出たようでした。SUREも大注目。

演奏を終えて、石峰寺のお座敷をかりてのお茶会。正面の掛け軸は、この日のために特別に掛けていただいた、伊藤若冲の「虎図」です。18世紀、京都の独創の画家、若冲は、晩年をここ石峰寺の草庵で暮らし、裏山にはみずから制作にあたった「五百羅漢」の素朴な石仏郡を残したのでした。ちんどん通信社の林さんがこの場の司会をしてくださり、たのしいひとときでした。急遽、ヤドランカ・サイン会も行われました。

石峰寺の門から見える、伏見の町に沈む夕日。

次回、11月26日のイベント「落日──舞と笛」は、石峰寺の本堂裏、若冲の「五百羅漢」がたたずむ竹林で、午後3時からおこないます。

室野井洋子さんの舞と、森美和子さんの篠笛です。竹林にひびく篠笛と舞を見に、秋の京都・石峰寺に足をお運びになりませんか? 終演のころ、舞台となる竹林も、晩秋の落日の時刻となるはずです。

(レポート・タキグチ)

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